女優、本間文子(ほんま・のりこ)の出演作をリストアップする。演劇畑の出身で『綴方教室』(1938年、東宝)で映画デビュー。多くの黒澤明作品にも出演をしている。「武田サダ」、「本間教子(ほんまのりこ)」、「本間敦子(ほんまあつこ)」、「本間文子」などの名義で出演している。基本的にノンクレジット出演は確認できていない。『海の呼ぶ聲』は戦時中の作品のためスタッフ、キャストのクレジットは省略されているため、一般的な「ノンクレジット」とは意味合いが異なることを記しておきたい。主役クラスの俳優ではないが、名前がクレジットされるくらいの中堅どころの名脇役と言ってもいいだろう。
黒澤作品などの旧作でよく見かける女優さんだったが、名前はまったく気にしていなかった。『戦国自衛隊』で戦車を見送る老婆役が妙に印象に残り、名前を調べてみて「本間文子」と知る。これがきっかけで気にするようになった。
このリストは、筆者が映画を観て見つけた(確認した)ものであるので勘違いがあるかもしれない。未見の作品は未掲載。おかしな点があれば情報をお寄せいただければ幸いである。
作品名 | 製 作 年 |
ク レ ジ ッ ト |
台 詞 |
説明 |
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綴方教室 | 1938 | 〇 | 〇 | 「本間教子」名義。ウサギをくれた隣のおばさん。準主役で露出度多い |
はたらく一家 | 1939 | 〇 | 〇 | 「本間教子」名義。主人公石村(徳川夢声)の女房。ほぼ主役。全編で露出 |
新雪 | 1942 | 〇 | 〇 | 「武田サダ」名義。湯川家のお手伝い、おとくさん |
海の呼ぶ聲 | 1944 | × | 〇 | 冒頭部、海で夫を亡くした主人公(杉村春子)に声をかけて慰める女人足仲間。戦時中のためかスタッフ、キャストのクレジットは一切ない |
野良犬 | 1949 | 〇 | 〇 | 二人の刑事(三船敏郎、志村喬)が聞き込みに寄った桶屋(東野英治郎)の女房。質問にいろいろ答える。比較的露出度高い |
風の子 | 1949 | 〇 | 〇 | ブンニヨモサ(小山文右衛門)の女房。山田一家の面倒を見ることに猛反対する。障子越しにその声が聞こえてくる。姿は見せない、声だけの出演 |
羅生門 | 1950 | 〇 | × | 口寄せを行う巫女。森雅之の声に吹き替えられているため、本人の声は聞けず。 |
ペン僞らず 暴力の街 | 1950 | 〇 | 〇 | 中盤。狩野組の被害にあった農家の母親。記者の取材を受けている息子(大森義夫)に「話したら殺される」とおびえている |
月よりの母 | 1951 | 〇 | 〇 | 源さん(小倉繁)の女房。なんでも屋を家族ぐるみでやっている。どうやら非合法の営業みたい。一種の闇屋かも |
おかあさん | 1952 | 〇 | 〇 | 平井パン屋のおかみさん。店主は中村是好、息子は岡田英次 |
安宅家の人々 | 1952 | 〇 | 〇 | 安宅家の婆や・おとく。冒頭からいきなり登場。中盤は姿を見せないが終盤に再登場 |
煙突の見える場所 | 1953 | 〇 | 〇 | 健三(芥川比呂志)が税金納入の催促をしに行く中華料理店のおばさん。亭主が浮気ばかりして家計が大変、役所で浮気の取締りをしてくれと言う |
夜の終り | 1953 | 〇 | 〇 | 下水道工夫:志村喬の奥さん。赤ん坊を背負ってスライド式の編み機を操作してる |
地の果てまで | 1953 | 〇 | 〇 | 山田万里(久我美子)の母親。ぐうたら亭主(青山杉作)に怒りをぶつけることもある |
夫婦 | 1953 | 〇 | 〇 | 早川茂吉(小林桂樹)の婚礼に関して早川家に訪ねてきている彼の叔母 |
花の中の娘たち | 1953 | 〇 | 〇 | 石井家の母親。全編を通じて登場 |
七人の侍 | 1954 | 〇 | 〇 | 百姓女。冒頭の大きなお尻アップはカットの繋ぎから本間と思われる。野武士の襲来を嘆く。子供を背負ったりして何度も登場する。その後、数カットに登場 |
33号車應答なし | 1955 | 〇 | 〇 | 殺害されたタクシー運転手(柳谷寛)の女房 |
生きものの記録 | 1955 | 〇 | × | 火事が収まったとき成り行きを見守る従業員の家族。その他大勢の中に高堂国典と一緒に佇んでいる。アップの画はなし |
泉へのみち | 1955 | 〇 | 〇 | タバコ屋のおかみさん。金沢幸三郎(根上淳)はここの2階に下宿している。終盤で商品で遊んでる子供(毛利充宏)を叱りつけている場面。京子(有馬稲子)が訪ねてきたら急に愛想よく対応する |
夫婦善哉 | 1955 | 〇 | 〇 | 中盤。柳吉(森繁久弥)と蝶子(淡島千景)が二階借りしている大家。一階に住んでおり亭主(谷晃)と一緒に箱作りをしているようだ |
不良少年 | 1956 | 〇 | 〇 | 煙草屋のおばさん。青山京子の下宿先 |
妻の心 | 1956 | 〇 | 〇 | 高峰秀子の叔母。2シーンに登場。大きなおはぎを作ってる場面と土屋嘉男を見送る場面 |
あらくれ | 1957 | 〇 | 〇 | 高峰秀子の養母。1シーンのみの登場。縁側で東野英治郎と会話する |
女であること | 1958 | 〇 | 〇 | 有田(石浜朗)の下宿先(2階借)のおばさん。富士縫製(Web情報では「みどり洋裁店」)の女主人。中盤から終盤にかけて登場。1階の作業場で足踏みミシンかけ、2階の物干し台で洗濯物を取り込んだりしている |
結婚のすべて | 1958 | 〇 | 〇 | プレイボーイ学生・中川浩(山田真二)の下宿先のおばさん。マリ子(団令子)の母親でもある |
鰯雲 | 1958 | 〇 | 〇 | 田植えしてる脇の畦道で加原夏子と会話する農婦 |
大怪獣バラン | 1958 | 〇 | 〇 | 部落に住む○○少年の母親。少年が山に入ったので、呼び戻すため叫んでいる |
無法松の一生 | 1958 | 〇 | 〇 | 茶店の婆さん。茶店のおばさん(馬野都留子)の母親みたい。中盤の松五郎の回想シーン。少年松五郎が父親のいる飯場へ行く途中の茶店で居合わせた客(上田吉二郎)からうどんをご馳走になるシーン |
ある日わたしは | 1959 | 〇 | 〇 | 上原美佐の下宿のおばさん。台詞もそこそこあり |
狐と狸 | 1959 | 〇 | 〇 | バス停前の石津食堂のおばちゃん。加東大介と夏木陽介の二人と会話していて、話に乗せられて洋服を買ってしまう |
或る剣豪の生涯 | 1959 | 〇 | × | 出雲お国(三好栄子)の舞踊の途中、乱入してきた三船敏郎に驚く前列の客。1秒もないワンカットのみ。その後のカットは何故かストップモーション |
海底から来た女 | 1959 | 〇 | 〇 | 関家の婆や。全編を通して登場する。海辺の別荘で敏夫(川地民夫)たちの世話をする |
女が階段を上る時 | 1960 | 〇 | 〇 | 女ったらしの虚言癖男(加東大介)の妻。空き地で高峰と会話する |
ふんどし医者 | 1960 | × | × | 百姓権助(小杉義男)の女房。子沢山の家族。序盤と終盤。子供が病気にかかって小山慶斎(森繁久弥)に診てもらう場面。小山宅の前に集まって心配している場面、など |
用心棒 | 1961 | 〇 | 〇 | 序盤。百姓女。冒頭、小屋で機織をしながら亭主(寄山弘)と会話する。取り乱さない。夫婦の息子(夏木陽介)は、百姓を嫌って飛び出していく |
月給泥棒 | 1962 | 〇 | 〇 | 掃除のおばちゃん。副業として高利貸し(トイチ)をやっているしたたか者。大写しで台詞も多い。出演箇所も多い |
山河あり | 1962 | 〇 | 〇 | 井上きしの(高峰秀子)親子が世話になっている農家(実家or親戚、よく分からず)の婆様。芹沢金兵衛(加藤嘉)の奥さん |
霧子の運命 | 1962 | 〇 | 〇 | 田村一夫(武内亨)の母親。終盤、霧子(岡田茉莉子)が夕食時の田村家を訪ねるシーン。松竹作品に出演とは珍しい |
ああ爆弾 | 1964 | 〇 | 〇 | 澤村いき雄のおかみさん |
赤ひげ | 1965 | 〇 | 〇 | 山崎努が暮らしてた長屋の住人。病床の山崎を見舞う連中のひとり |
おれについてこい! | 1965 | 〇 | 〇 | 河西昌代(昌枝の母)。昌枝(白川由美)が正月に帰省した時に大松監督(ハナ肇)をもてなす |
暴れ豪右衛門 | 1966 | 〇 | ? | 桶を担ぐ農婦。中盤は登場しないが終盤で再登場 |
裸の大将 | 1968 | 〇 | 〇 | 山下清が初めて訪れた農家のおばさん。芋を恵んでくれる |
奇々怪々俺は誰だ?! | 1969 | 〇 | 〇 | 田舎で暮らしている鈴木太郎(谷啓)の母親 |
尻啖え孫市 | 1969 | 〇 | 〇 | 序盤。岐阜城下町で祈祷する巫女。牧田三右衛門(五味龍太郎)に立ち退きを命ぜられる |
戦国自衛隊 | 1979 | 〇 | ? | 戦車を見送る老婆 |
八月の狂詩曲(ラプソディ) | 1991 | 〇 | × | お堂に集まって皆でお経を唱える老婆たちのひとり。数回写る |
まあだだよ | 1993 | 〇 | × | 酒屋の婆様。猫を抱いている |