『狼と豚と人間』(1964年、東映)のロケ地を紹介しよう。ほんの一部ですが…。
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写真下に記載した「h:mm:ss」は本編開始時からの経過時間である。おおよその経過時間と考えていただきたい。映画本編のキャプチャ画像は時系列順に並べて、説明をしていく。
文中に《数字,数字》 の箇所があるが、これはグーグルマップで認識する緯度経度である。リンクを貼っているので現在の地図を参照することができる。また、この緯度経度を使用してグーグルマップで検索するとその場所が表示される。
画像にカーソルを重ねたとき「指」の形状に変化する画像は、クリックすると拡大表示されます。
【ロケ地紹介】
(写真-0:12:21)は三郎(北大路欣也)たちが母親のお骨を海に流すために水門にやって来たシーン。ここは何処だろう、と思ったら「辰巳」と画面に写っていた《35.645726292321186, 139.80791197996246》。辰巳水門は1963年に完成とのことなので完成したばかりの様子が写っていることになる。ちなみに(写真-0:12:21)は東京湾側を写している。
(写真-0:28:19)は、井の頭線渋谷駅改札口前付近である。画面中央奥には電車が写っている。国電山手線の玉川改札方面を背にして撮影している。現在は渋谷マークシティができたため大きく様変わりしてしまっている。東急百貨店も解体され、山手線の渋谷駅改良工事も続行中(2024年7月現在)、往時の姿はもう見ることができないのは寂しい限り。
筆者も大学生時代(1980年頃)は井の頭線を利用していたので懐かしいのだが、銀座線への乗り換え通路など駅の構造は今一つはっきりとは記憶していないのは悔しい。(写真-0:28:19)の左側の一階分高くなっている通路が銀座線の改札口に続いているようだ。
(写真-0:31:55)は、現金強奪に成功した強奪犯グループの水原(江原真二郎)が逃走するシーン。井の頭線渋谷駅前コンコースからここまで逃走してきたのだ。ここは、東横線渋谷駅改札口前から東急文化会館(現在は渋谷ヒカリエ)へ続く連絡通路の中ほどにあった地上へ降りる階段《35.65899783855589, 139.7026028588877》。都電乗り場やバス乗り場があった。この連絡通路は銀座線の線路のすぐ脇に作られてあった。現在はこの通路部分は銀座線の渋谷駅となっている。
(写真-0:31:56)には東急文化会館にあった渋谷パンテオンで上映中の映画の宣伝看板が見える。記録によると『633爆撃隊』は1964/7/25に公開されている。本作『狼と豚と人間』は1964/8/26公開なので1964/7/25~1964/8/26の間に撮影されたのだろう。
(写真-0:32:10)は、強奪犯グループの黒木次郎(高倉健)の逃走シーン。ここは渋谷駅西口バスターミナル横の玉川通りの交差点付近《35.657281304882915, 139.7009288179183》。首都高速3号渋谷線の真下。画面右奥には東横線ホームの蒲鉾屋根、その手前の山手線ホームには人影も見えている。
(写真-0:32:38_2)、(写真-0:32:41)、(写真-0:32:43)は現金強奪に成功した犯人グループがアジトに向かうシーン。ヒントになるのは(写真-0:32:38_2)に写っている団地、(写真-0:32:41)の左奥の工場に掲げられている看板、そして橋のアーチ。工場の看板には「小野田セメン」とかろうじて読める。「ト」は橋の鋼材と重なっていて見えないようだ。これらのことからこの橋は春海橋(自動車用道路)と晴海橋梁(鉄道用)であることが分かる《35.65894551733063, 139.78933027905265》。後方に見えていた団地は1997年に解体されてしまった晴海団地である。跡地は晴海アイランドトリトンスクエアとなっている。
ここで注意しておきたいのだが、映画の流れでは黒木次郎(高倉健)と杏子(中原早苗)が乗った自動車がこの春海橋を渡ってるような編集がなされているがよく見てほしい。春海橋を渡っている自動車の屋根にはタクシー行燈が載っている、また車種も2人が乗っている物とは異なっているようだ。これらのことから、春海橋を渡っているのは水原(江原眞二郎)が渋谷駅から乗車したタクシーだったと考えるのが妥当ではなかろうか。
(写真-0:32:38_2)、(写真-0:32:41)、(写真-0:32:43)を撮影したと思われるキャメラ位置の場所に行ってみたのだが、現在は高い堤防が張り巡らされていて、かつ樹木が生い茂っているため、その場所からは春海橋を見ることができなかった。参考までに近くの歩道橋上から撮影した写真を載せておく。また、春海橋上から見たキャメラ位置(堤防の中間辺りか)を望む写真も載せておく。
東京都港湾局専用線(晴海線)の鉄道橋「晴海橋梁」は、保存のための工事が行われており(側面部分にパネルがはられている)、遊歩道に生まれ変わる予定らしい。
余談だが、地名や鉄道橋などは「晴海」なのだが、道路橋だけは「春海」。どのような経緯があってこうなったのだろうか。ご存じの方がいらっしゃったらご教授願いたい。
(写真-1:05:33)はブツと金の鞄を預けたというジャズ喫茶に行く次郎(高倉健)が運転する自動車。この場所のヒントは約2分後のカット(写真-1:07:47)に写っていた。「百軒店相互会」とあるので古地図を調べてみると判明。(写真-1:05:33)の自動車がいるのは、渋谷・百軒店にあるカレーで有名な「ムルギー」の店舗前である(掃除中の人、食品サンプルのショウ・ウィンドウが写っている)《35.65898560263054, 139.6966055862177》。「ムルギー」の公式Webサイトに掲載されている開店当時の店舗入口の写真と同じである。
ところでこの「ムルギー」だが、1965年の住宅地図には載っていないのである。実際と地図とで多少の食い違いはあるものだが、「ムルギー」は1951年創業なのですでに10年以上経過している。それにもかかわらず掲載されていないのは非常に不思議である。
(写真-1:05:40)は、ジャズ喫茶に行く次郎(高倉健)が自動車から降りてくるシーン。突き当りの壁に「ノーブル専用」と書かれてある。何の専用なのだろう、ゴミ捨て場かもしれない。1965年の地図には「喫茶ノーブル」がこの場所にある。
(写真-1:05:49)は鞄を預けたというジャズ喫茶「ORNETTE」がある路地。どうやらこの路地は映画館「テアトル渋谷」の裏へ続いているようだ。残念ながらこの路地も1965年の住宅地図には載っていない。そして、現在は本当にこの路地もなくなっている。この路地は写真「路地跡(2024年5月)」の焼肉屋さん辺りにあったと思われる。
(写真-1:07:41)は、木村(室田日出男)たちに追われている次郎(高倉健)が自動車に乗り込む直前のカット。(写真-1:05:40)で停まっている自動車の別アングル。「釜めし 八潮」が目印。
(写真-1:07:46)は、木村(室田日出男)たちに追われている次郎(高倉健)が自動車で逃げ去るシーン。この場所は、中央に写る「ビクタ―ステレオ… ビートルズ…」の看板から判明。現在(2024年)の道頓堀劇場のすぐ近く、ローソン道玄坂二丁目店などの前である《35.65910670933015, 139.69687443208556》。
【参考資料】
下記の書籍やWebサイトを参考にさせていただいた。作者の方々には心より御礼いたします。ありがとうございました。
- 「ムルギー」公式サイト
- ウィキペディア
- 『東京都全住宅案内図帳 江東区 1970年』
- 『商工住宅名鑑 渋谷区南部 1965年』
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【編集履歴】
- 2024/08/16:初版公開
- 2024/08/28:辰巳水門部分を追加